少し前になりますが、風情をうむひとつの要素として、「紙」と「影」と住まいへの、繋がりについてお話させていただきました。
ブログ記事:「風情」の役割と心に感じる「ここちよさ」
その後、お客様からこんなお話を伺いました。
それは、「影」が子供さんの想像力や好奇心を高めることに、一役買っているというお話でした。
子どもは、動く物を見たり、体感したりすることで、感受性を豊かにして、自分から、物事を発するという気持ちを高めてくれるという説があるとのことだそうです。
影を受動的に見て、考える。
「影」は同じ場所からでも眺めて見ても、毎日が違う姿、違う形で、表現されます。また、「影」を作る「モノ」に追随して影はその形を変え、それは、角度によっては全く想像していない形状に変化します。
例えば、障子に映る樹木の影は、吹く風によってそのしなやかさを影に落とし、
時には鋭く。ときには柔らかく動きます。
また、現実は立体であるべき木が、真っ平らに平面となり、
3次元的に動く枝が障子の上を思わぬ動きを伴いながら平面を往来します。
立体と平面が連続的につながる。例えば、障子の上で、外部と内部が平面的につながる。
それは、平面的な動きにもかかわらず、その原因を追求すると、実は強烈に複雑な要因でできていることに気づきます。
それが、障子ではなく、立体的な部分に影を落としたとき、その形状と動きは更に複雑に状態を変えます。
もうひとつ、光源が複数になるとそれは、思考を停止させてしまうほどややこしいものになります。
不思議なもので、単に眺めているだけで、いろいろと考えてしまうのではありませんか。
能動的に影と向き合ってみる。
ふと思い返すと、私が幼少の時には、「影踏み」や「影絵」など「影」と触れ合うことが多かったように思います。
例えば、縁側から鉛筆を光にあてて、障子に「影」を写してみる・・・
鉛筆の距離によって、「影」の大きさが変わる・・・
鉛筆の角度によって、「影」の形が変わる・・・
ふと気づいてよく見るとボヤけて拡散して消えている部分がある。
自然と光がある場所で暮らしてきた私は、それは自然の出来事であり、それが当然の出来事であるものとして、毎日の生活のなかで、身近に体験をしていたのかもしれません。
私にとっては「障子」に映る「影」が家の中にいながら外の空間や自然とのつながりになってきたのだとも思います。
現代的な影を考えてみる
現代では、人工的に作り出された物に囲まれた中での幼少期を過ごすことが多くなってしまうことが多く、影といっても、複数の照明器具が作り出すフィックスされた、若干味気ない影や、街頭の下の少し不気味な「影」のイメージが多いようにも思います。
そういったことも原因なのか、最近では市街地を少し離れて、広めの土地に、障子に囲まれた住まいで、子育てを希望されるご家族も多い気がします。
どことなく、暮らしに「風情」を求めているのかもしれません。
グリーンスタイルが考える影の作り込み
私たちは住まいをご提案する際に、「間接照明」をご提案させていただいたりします。
光の加減でその場所に出来る「影」は、貴重な物であり、その住まいの持っている特徴になるのかもしれません。
光と影は照らす対象物以外にも奥行き感と距離感を感じさせ、空間を変える効果ももたらせます。
もちろん、以前、押野見が書かせていただいた「照明の色」も大切な要素になります。
ブログ記事:ここちよい照明計画~照明の色について~
自然にみんなが集まる「居間」や「和室」には、自然がくれる恵として、自然を感じ情緒や思考を深める「光」を大切に扱うことで、情緒を作り出す影に趣をもたせます。
また、その影が外部と室内をつなげる役割を持つことをしっかりと意識します。
そうして、わたしたちはご家族のここちよい空間をご提案しています。